分権改革が地方自治の肥大化を招いては元も子もない。 内向きの改革だけではすまない。
改革がグローバル経済にどう適合するかが問われる。 相互依存の深さをみれば、東アジア経済統合は現実的な課題である。
農業改革をテコにアジア各国との間でFTAを締結することだ。 金融市場改革など知的支援を通じて中国の人民元改革を促し、アジア通貨単位の創設をめざすときでもある。
それには、中国、韓国など近隣諸国との関係を早急に改善しなければならない。 偏狭なナショナリズムのぶつかりあいを排し、日中首脳がいつでも話し合える間柄にする。
それは日中の国際「ポスト郵政」の改革には何らかの痛みが伴う。 政権の不人気につながるかもしれない。
しかし、人気ある政権が人気取り政策に傾斜することほど危険はない。 短期政権に終わりはしたが、I首相は首相就任にあたり「ごきげんとりはしない」と言明した。

人気あるK首相が不人気な改革を断行して初めて日本再生の道は開ける。 的責務である。
野球の世界はホワイトソックスとロッテの勝利で「スモール・ベースボール」全盛の時代を迎えたが、世界の先進国ではどの国も「スモール・ガバンメント」への模索を続けている。 問題はどうやって「小さな政府」を実現するかである。
その手順をめぐって、政治が揺れるのは珍しく小さな政府へ、大きな改革をした時だ。 しかし、どの国にも共通するのは税制改革が主軸になっている点だ。
小さな政府への歴史的改革とされるレーガノミクスもSリズムも柱は規制撤廃と並んで税制改革だった。 税制改革を棚上げして歳出削減を先行させるK流はわかりやすいが、世界標準からみると、やや変わっている。
税制抜きで大改革は可能なのだろうか。 「項羽の四面楚歌の心境だ」。
こうもらしたT財務相を財務官僚が「大臣、そんなことはありません」とたしなめたという。 二○○七年度の通常国会に消費税率引き上げを含めた法案を提案するという財務相は、歳出削減先行を掲げる政府、自民党主流から非難の集中砲火を浴びた。
まるで「T包囲網」ができたようだった。 財務官僚がたしなめたのは、漢の劉邦に包囲された楚の項羽のように民が投降したと思い込み揺らぐ改革嘆く必要はないということだろう。
包囲網にあったはずのT財務相は「項羽の心境」からさめていた。 「人口減少社会が現実化し、グローバル競争が激化する。 改革の背景にはこの二点がある。 いかに魅力ある日本をつくるか。 いかに小さな政府をつくるか。 財政再建は構造改革のコアにある」と改革の理念を説く。

焦点の消費税引き上げ提案も「○七年度をメドに消費税を含め税体系を改革するという昨年末の与党税制改正大綱やそれを踏まえた政府の骨太方針の線に沿っている」と正当性を主張する。 もちろん財務相も提案がすんなり通るとは思っていない。
「一潟千里にいけると簡単に考えているわけではない。 景気動向も政治状況もあるが、一番大事なのは国民の理解だ」と語る。
そのうえで税制改革を「いままでの改革の仕上げだから、それが実現できなければ画竜点晴を欠く」そのT財務相が税の師と仰ぐY自民党税制調査会長は「基礎年金財源として、そしてプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化のために消費税引き上げは避けられない」と考えている。 その取り扱いとなると、「ポストK」がからむ政府、与党内の路線闘争さなかだけに慎重だが、少なくとも財務相が「四面楚歌」の状態でないのはたしかである。
「ポスト郵政」のK改革は急ピッチで進んでいるようにみえる。 郵政民営化を受けて、政府系金融機関の改革も実現しそうだ。
道路特定財源の一般財源化という懸案にも見通しが開けた。 「離れですき焼き」とS元財務相に批判された特別会計の改革も動き出した。

地方分権と位置づける。 にもかかわらず、小さな政府への改革には物足りなさが残る。
肝心の税制改革が素通りされているからだ。 消費税増税が目の前にあれば、歳出削減の気が緩むというのはわかるが、短期政権ならともかく来年九月で五年半にもなる長期政権で税制はほとんど手つかずというのは異例だろう。
三位一体改革も半歩踏み出した。 医療費抑制など社会保障改革論議にも火がついているといえば「税制主軸」が世界の常識だ。
S改革では官僚機構改革とともに大胆な税制改革が目を引いた。 所得税率を引き下げ、付加価値税率を引き上げて直間比率を是正する。
S首相自身、H蔵相から改革案の説明を受けたとき、これだけ直接税から間接税に大規模に移すと物価上昇を招かないか心配だったという。 「付加価値税を大幅に引き上げて財源を確保しなければならないにしても、所得減税は非常に重要だった」と述べている。
R改革では、規制撤廃、非軍事支出の削減とともに、所得税などの大幅減税が柱になった。 しかし、冷戦期の米ソ緊張に伴う軍事費増額で双子の赤字を膨らませる。
「レーガノミクスは結局、K主義ではないか」とG教授に皮肉られたものだ。 しかし冷戦後、米国経済はよみがえる。

それはR改革の効果と無縁ではないだろう。 歴史的改革に学べば、いま考えなければならないのは、日本経済を再活性化するための総合戦略である。
進行し始めた人口減少社会にあって財政収支を改善するには、歳出改革、規制改革とともに税制改革に取り組むしかない。 それも数字合わせのために、単に消費税率を引き上げるのではない。
引き上げに伴い生活必需品などに軽減税率を適用するのも課題だ。 消費税増税による逆進性を緩めるには、中所得層の所得税率引き下げや低所得層への逆所得税(給付)も検討していい。
グローバル大競争に対応してアジアをにらみ法人税率の引き下げも考える段階だ。 こうした総合戦略をテコに自然増収を生む新たな成長軌道をめざすときである。
そこにこそ、官僚任せではない政治の指導力が求められる。 小さな政府には大きな改革が必要である。
ポストKをめぐる経済政策論争が政治化の様相を強めている。 政治の季節だから、やむをえない面はあるし、官僚主導の政策形成が政治主導になったしるしとみることもできる。
しかし、いま日本経済は失われた時代を終え、人口減少社会を迎えるという戦後最大の転換期にある。 こんなときこそ、大きな目で日本経済の将来を見据えた冷静な議論が必要になる。
日本経済はようやく息を吹き返したが、低成長に甘んじていれば、停滞社会に迷い込む。 ポストKに求められるのは、日本経済を新たな成長軌道に乗せるための明確な指針である。
Sの経済学風にいうなら、それは「新成長へのイノベーション(革新)」である。 ポストKの政治的政策論争を繰り返しているうちに、おぼろげながら「永田町コンセンサス」が浮かんできた。
第一に、デフレの出口がみえてきたという実態認識だ。 K首相自身は任期中の脱却をめざす考えだし、T財務相は「今年中に克服できる」と語る。
第二に、小さな政府をめざして改革を続けるという認識である。 そして第三に、タイミングや幅はともかく、消費税率の引き上げはいずれ避けられないという点だろう。

しかし、ポストKの経済政策論争がこうした論点で終始するとすれば、ややさみしい。 これまでのところ数字合わせの色合いが濃く、政策論争から日本経済の将来はみえてこない。
まずK改革とは何だったのかを問い直すことだ。


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